最近、違和感を感じるんです

第一章:些細な違和感

一人暮らしを始めて、三年が経った。ワンルームだけど、駅から徒歩五分、都内にしては家賃も手頃で、正直かなり気に入っている部屋だった。日当たりもよく、休日はベランダに椅子を出して、コーヒーを飲みながらぼーっとするのが、ちょっとした贅沢だった。

平日は、朝六時半に起きて、シャワーを浴びて、簡単な朝食を済ませてから、七時半には家を出る。帰りは、仕事の忙しさによってまちまちだけど、大体、夜の八時から九時の間には、部屋に戻ってくる。この三年間、ずっと同じリズムで、変わらない日々を送ってきた。

違和感に気づいたのは、ある月曜日の朝だった。出勤前、冷蔵庫を開けたら、買ったばかりのはずの牛乳パックが、思っていたより、軽かった。手に持った瞬間の、あの、わずかな軽さの違い。毎朝の習慣で、なんとなく体が覚えている重さと、微妙にずれていた。

自分が、寝ぼけて飲んだのかもしれない。最初は、そう思って、深く気にしなかった。疲れが溜まっていると、たまに、記憶があいまいになることもある。

その週は、なぜか、違和感を集めていたような気がする。

食パンの残りが、思っていたより、一枚少なくなっている気がしたり、冷蔵庫のドアポケットに入れていた缶ビールが、一本、足りないような気がしたり。どれも、数えていたわけじゃないから、確信は持てなかった。ただ、「あれ?」という、小さな引っかかりだけが、頭の隅に、少しずつ、積もっていった。

金曜の夜、飲み会の帰りに、少し酔っぱらった状態で帰宅した。玄関の電気をつけて、そのままキッチンに向かうと、シンクのあたりが、うっすらと濡れていることに気づいた。

「あれ、水漏れかな」

蛇口を確認したけれど、特に、異常は見当たらなかった。酔いのせいで、自分が、何か、思い出せないことをしたのかもしれない。そう思って、その日は、深く考えずに、そのまま、布団に倒れ込むように眠ってしまった。

その週はとにかく、いろんなことに敏感になりすぎていたのかもしれない。仕事のストレスもあったし、季節の変わり目で、体調も、あまり良くなかった。だから、こういう些細な違和感も、全部、気のせいの延長線上にあるものだと、無理やり自分を納得させていた。

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