最近、違和感を感じるんです
第五章:再発する違和感
一ヶ月ほど、これといった出来事もなく、平穏な日々が続いた。仕事も忙しくなってきて、部屋の中のことを、細かく気にする余裕が、なくなっていたのもあると思う。あの違和感のことは、少しずつ、記憶の奥に、しまわれていった。
でも、ある日、いつも通り、仕事から帰ってきたとき、玄関のドアを開けた瞬間、何かが、いつもと違うと感じた。
はっきりと、これだ、と言えるものではなかった。ただ、部屋の空気そのものが、微妙に、違う気がした。自分の匂いとは、明らかに違う、何か異質な匂いが、うっすらと、部屋の中に、混じっている気がした。
誰かの、体臭のような、生活の匂いのような、そんな感覚だった。玄関で靴を脱ぎながら、思わず、部屋の奥を、じっと見つめてしまった。
念のため、クローゼットの扉を、そっと開けてみた。中には、いつも通り、自分の服が並んでいるだけだった。特に、荒らされた様子も、見慣れないものが増えている様子もなかった。
「気の、せい…だよね」
そう呟いて、いつも通りの夜を過ごそうとした。でも、その夜は、ベッドに入ってからも、なかなか、寝付けなかった。目を閉じても、さっき感じた、あの匂いのことばかりが、頭に浮かんできてしまう。
とうに忘れて埃をかぶっているであろう、防犯カメラの記録も久しぶりに見てしまった。当然誰も映っていない。
一度収まっていたはずの違和感が、また、じわじわと、心の奥から、顔を出し始めていた。