最近、違和感を感じるんです

第六章:天井のシミ

その週末、久しぶりに、部屋を、隅々まで掃除することにした。落ち着かない気持ちを、体を動かすことで、少しでも紛らわせたかったのかもしれない。掃除機をかけ、棚のホコリを拭き、シーツも新しいものに替えた。

一通り終えて、達成感とともに、部屋の中を、ぐるりと見渡した。そのとき、ふと、天井の隅に、目が留まった。

小さな、丸いシミだった。直径にして、五百円玉くらいの大きさだろうか。色は、薄い茶色がかっていて、コーヒーをこぼした跡にも見えなくはないけれど、天井にコーヒーをこぼすなんて、そんな覚えは、当然、ない。

椅子を持ってきて、少し近くから、確認してみた。以前は、こんなシミ、あっただろうか。三年間住んでいて、天井の様子なんて、そんなに、まじまじと見たことがなかったから、正直、自信が持てなかった。

じっと見ていると、そのシミの輪郭が、なんとなく、丸みを帯びた、別の形に見えてくる気がした。目を細めると、まるで、何かが、こちらを見下ろしているような、そんな錯覚さえ覚えた。ばかばかしいと思いながらも、視線をそらさずには、いられなかった。

我慢できずに、不動産会社に、電話をかけてみた。「天井にシミがあって、気になるので、確認してもらえますか」と、努めて、冷静に伝えた。

「かしこまりました。天井裏には、点検口が、クローゼットの上部に、一つ、ございます。配管の点検用のスペースなので、雨漏りなどが原因かもしれません。念のため、一度、確認だけ、させていただきましょうか」

その返答に、少しだけ、ほっとした。雨漏りなら、原因がはっきりしている分、まだ、納得がいく。もし、それが理由なら、これまでの違和感も、全部、説明がつくのではないかという、淡い期待さえ、持ち始めていた。

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