最近、違和感を感じるんです
第七章:点検口
数日後、不動産会社の担当者が、業者を連れて、部屋を訪れた。立ち会いのもと、クローゼットの中の、天井近くにある、小さな正方形のパネルを、業者が、慎重に外し始めた。
パネルが外れると、真っ暗な空間が、ぽっかりと、口を開けた。懐中電灯で、中を照らしながら、業者が、顔を近づけて確認していく。自分も、少し離れた場所から、その様子を、息を詰めて、見守った。
「うーん、配管とダクトが通ってるだけですね。特に、水漏れの跡とかも、見当たらないなあ」
業者は、そう言いながら、懐中電灯の光を、奥の方まで、ゆっくりと動かした。狭い空間の中、断熱材らしきものと、灰色の配管が、複雑に入り組んでいるのが、光の中に、浮かび上がっていた。特に、変わったものは、その場では、見つからなかった。
「大丈夫そうですね。念のため、シミの原因は、また分かり次第、ご連絡しますが、今のところ、緊急性は、なさそうです」
担当者は、そう言って、パネルを、元通りに閉め、丁寧に頭を下げて、帰っていった。
一人になった部屋で、改めて、クローゼットの上部を、見上げてみた。パネルは、何事もなかったかのように、閉じられている。原因不明のまま、一応の「異常なし」という判定が、下されたことになる。
安心して良いはずなのに、なぜか、心の奥に、拭いきれない違和感が、まだ、居座っていた。狭い空間を、懐中電灯の光で、さっと確認しただけで、「異常なし」と言い切ってしまって、本当に良いのだろうか。あの奥、光の届かない、もっと奥の方には、一体、何があるのだろう。
そんな考えが、頭から、離れなかった。