最近、違和感を感じるんです
第八章:夜の物音
その日の夜から、これまでとは、明らかに違う種類の異変が、始まった。
いつも通り、日付が変わる少し前に、布団に入る。照明を落とし、スマホを少し触ってから、目を閉じる。うとうとと、眠りに落ちかけた、その瞬間だった。
天井の方から、かすかに、何かが軋むような音が、聞こえた。
「みしっ」という、木材が、わずかに、重みでたわむような音。古いマンションだから、気温の変化で、建材が伸び縮みして、そういう音がすることもあると聞いたことがある。自分に、そう言い聞かせて、また、目を閉じた。
しばらくして、また、同じような音が、聞こえた。「みしっ」今度は、さっきより、少しだけ、はっきりと。
そのまま、じっと、天井の方に、意識を集中させてみる。一度、気になり始めると、もう、眠るどころではなくなった。布団の中に顔を隠し、耳だけを澄ませて、何時間も、じっとしていた。物音は、思い出したように、みし、みしっと、不規則な間隔で、続いた。
朝方、まともに眠れないまま、出勤の時間が来てしまった。会社でも、頭がぼんやりして、集中力が、続かなかった。
そんな日を繰り返して数日、気づいたことがある。音は、決まって私が完全に寝入る、ほんの少し手前のタイミングで、聞こえてくる。まるで、こちらが、眠りに落ちるのを、じっと、待っているかのように。
今夜も、また、同じように、天井から、あの音が、聞こえてくるのだろうか。考えるだけで、家に帰ることが、少しずつ、億劫になっていった。