最近、違和感を感じるんです
第九章:警察への相談
もう、自分一人で、抱えきれる話ではないと、感じ始めていた。仕事帰り、意を決して、少し離れた場所にある警察署に、直接、足を運んだ。
対応してくれたのは、四十代くらいの、落ち着いた雰囲気の警察官だった。これまでの経緯を、順を追って、できるだけ具体的に話した。牛乳や食パンの減り、防犯カメラの記録、天井のシミ、点検口の確認、そして、夜に聞こえる、あの物音のこと。
警察官は、メモを取りながら、時折、相槌を打って、話を聞いてくれた。でも、話し終えたあと、返ってきた言葉は、期待していたものとは、少し違っていた。
「お話は、よく分かりました。ただ、現時点では、侵入の形跡や、被害と言えるほどのものが、確認できていませんね。防犯カメラの映像にも、不審な人物は写っていないということですし、これだけだと、こちらとしても、なかなか、動きづらいところがあります」
物理的な証拠がない以上、警察としても、対応の仕様がないという、ドラマみたいなことが本当に起きるんだと、感心していた。実際に日常の中で、確かな違和感を積み重ねてきた身としては、「気のせい」の一言で片付けられても、不安を、拭いきれない。
肩を落として、帰ろうとする自分に、警察官が、席を立ちながら、最後に、一つ、付け加えてくれた。
「一応、参考までにですが……玄関のカメラだけだと、家の中の状況までは、分かりませんからね。もし、まだ、ご不安なようでしたら、室内にも、カメラを置いてみるのも、一つの手かもしれません。それで、何か、映るようなことがあれば、また、改めて、ご相談ください」
その一言が、頭の中に、重く、残った。今まで、玄関にさえ気をつけていれば、大丈夫だと、どこかで、思い込んでいた。
でも、もし、すでに、部屋の「中」に、何かが、入り込んでいるのだとしたら――。