最近、違和感を感じるんです
第十一章:映像の中身
その場で、飛び上がりそうになった。電車の中だということも忘れて、思わず、画面に顔を近づけた。周りの視線を感じて、我に返り、いったんスマホを鞄にしまった。心臓が、ドクドクと、嫌な音を立てているのが、自分でも分かった。
会社に着いてからも、仕事が、まるで手につかなかった。頭の中は、さっき見かけた映像のことでいっぱいだった。昼休み、誰もいない給湯室に、こっそり移動して、震える手で、もう一度、アプリを開いた。
深呼吸を一つしてから、今度は、倍速ではなく、通常の速度で、その部分を、最初から、確認することにした。
深夜二時三分。画面の中、暗視モードの青白い光に照らされた部屋の隅、クローゼットの扉が、本当に、ゆっくりと、開いていった。誰かが、外から開けたのではなく、明らかに、内側から、押し開けるようにして。
扉の隙間から、まず、細い腕が、一本、伸びてきた。それから、頭が、そして、体全体が、まるで、狭い場所に長時間押し込められていた生き物のように、ゆっくりと、這うように。
痩せた体つきの、人間だった。性別も、はっきりとは、分からない。伸び放題の髪が、顔の大部分を覆っていて、着ている服も、元の色が分からないくらい、薄汚れていた。
その人影は、クローゼットから完全に出た後、しばらくの間、ベッドで眠っている自分の方を、じっと、見つめていた。何をするでもなく、ただ、微動だにせず、その姿勢のまま。時間にして、一分か二分だったと思うが、映像を見ている自分にとっては、それが、永遠のように、長く感じられた。
やがて、その人影は、音を立てないように、注意深く、台所の方へと、移動していった。冷蔵庫の扉を、静かに開け、中から何かを取り出して、その場で、口にしているのが、映像から見て取れた。まるで、何度も繰り返してきた、いつもの動作であるかのように、迷いのない、慣れた仕草だった。
十数分後、その人影は、再び、クローゼットの方へと、戻っていった。扉を、内側から、そっと、静かに、閉めた。それきり、朝までの映像には、何も、変化はなかった。